トヨタ期間従業員に行こう

トヨタ自動車期間従業員であった筆者が期間工、派遣社員、非正規社員についてや雇用の問題そして1年間にわたる失業生活、その後のタクシー運転手としての日々なんかをぬるめに書いています。

田原工場配属
田原工場に配属になりました。研修期間中のことは後日あらためて書いていきたいと思います。

田原工場は「刑務所」「収容所」などと言った、芳しくない情報もありましたが、来てみると寮も工場も綺麗なので少し安心しました。田原市には数基の風車があり、トヨタの人はそれを扇風機と呼んでいるそうです。

その風車が殺伐とした工場の風景に起伏をつけいて、ボクには火葬場の煙突を想像させるものでした。夕方、寮に帰るバスの中から見える夕陽を浴びた風車は、そこで何かを生産しているというよりも、モニュメントのようにそこにに佇んでいるだけのように思えます。

それを見ている無口な期間工の集団は、いったい何を思うのでしょうか。故郷に残してきた恋人のことでしょうか。親や兄弟、嫁や子供のことでしょうか。それは「別離」に関わることであり、その深重な思いや空気によって、多くの人がその風車が煙突に見えているのではないかと考えました。そして沈黙こそが精神的なバランスを保てる方法なのかもしれないと。

とにかく、ボクは田原工場に配属されました。少しづつ毎日のことや田原市のことなどを書いていこうと思います。
トヨタ田原工場
田原工場は広いです。敷地面積は370万平方メートル(約112万坪)、建物面積は97万平方メートル(約28万坪)ということです。と言ってもピンとこないのですが、370万平方メートルというのは東京ドーム80個分だそうです。従業員はこの1月現在9192人ということで、ちょっとした村や町の人口ぐらいあります。

下の画像はGoogle Earthのものです。
田原工場

水曜日の15時ぐらいに聖心清風東寮を出発して18時前に各寮に着きました。その後、寮での説明を受けて与えられた部屋に散らばっていきました。次の日の木曜日からは朝のバスに乗って工場に出勤します。その日の午後には職場が決まるので、金曜日からはその職場のミーティングルーム等に行くことになります。

とのかく広いし同じような建物なので方向感覚を失くしそうになりましたが、何日かすれば分かるようになりました。というより工場内のバス停は何番目のバス停かという感じで記憶しましたけれど。

赴任した週は、まだ遊びみたいなもんで、それからの辛い日々を想像すら出来ないかもしれません。ある人は「絶望工場」と喩えました。またある人は「会社は大きいが、そこで働く人の小さいこと」と詰りました。ボクにもまだまだ分かりませんが、きっとこれからの毎日には、普通ではないことが待ち構えているのだろうと思いました。
田原工場の水曜日
一直です。毎日17時前に寮に辿り着きます。それからご飯を食べると少し寝ます。それからが寝れない日が多いです。昨夜も21時ごろ目がさめて、なかなか寝付かれず2時ごろ寝たと思ったら、もう起きる時間でした。眠い。

田原寮から見た新日化カーボンの工場と夕陽
新日化カーボンの工場と夕陽

毎週水曜日は田原工場の配属日なので、新人期間従業員の人たちがやってきます。寮の玄関先に聖心寮からの荷物が届いているのを見ると、なんだか懐かしい気持ちになります。

同期の人で姿を見なくなった人もいます。辞めてしまったのだろうと思っています。話はしなくても、同期の人の姿を見ると少し元気になります。

この夕陽を見ながら、あと何回、田原の夜を過すのだろうかなんて考えていました。少し涙もろくなっています。疲れているせいでしょうか。荒川静香のイナバウアーを見るたびに、泣けてきます。天皇皇后両陛下が三宅島をご訪問なさったテレビニュースを見ても、なんだか涙が出てきました。
土曜出勤
J1名古屋グランパスと鹿島アントラーズの試合をテレビ観戦していました。豊田スタジアムであったこの試合は0−0のまま終わりました。グランパスのユニホームは前は「TOYOTA」で後ろは「豊田織機」です。愛知に住んでいると、いつもどこかでトヨタを感じてしまいます。「豊田」とか「豊」が屋号に付いていると、きっとトヨタに関係あるのだとうと思ってしまうのですが、恐らくそう思って正解なのでしょう。

田原寮の夜明け
田原寮の夜明け

さて今日で1月からあった月一回の土曜出勤が終わりました。というボクは一度しか経験しませんでしたが。

田原に来てひと月が過ぎました。身体は相変わらず筋肉痛やら関節痛などありますが、仕事は少し慣れました。慣れるのは良いのですが、今週は何度かケアレスミスをしました。それでも職場の上司(EXやGL)は「気をつけて」と言うぐらいで、怒るとかいうことはありません。それゆえにこっちのほうがとても申し訳なく思ってしまいます。ライン外のそういった人たちがボクのミスをカバーするのですから。

田原工場については赴任する前にネット上でのあまりよくない噂を耳にしていたのですが、ボク個人の感想を言うと社員の人たちは良く教育されていると思いました。あまり感情的にもならないですし、威張った様子もありません。若い社員の人なんかも、年上のボクにはちゃんとそれ相応の言葉使いや態度で接してくれます。ボクの組が特別なのかもしれませんが。

それでも堤工場の経験者の方がいて「社員なんて挨拶もしてくれなかった」ということを聞いていたので、他の組や工場だとそういったこともあるのかもしれませんね。

今のところは、身体が痛いだけで他は順調にすすんでいるように感じます。それでも同期の人で何人かいなくなった人もいます。きっとボクの仕事よりきつかったのか、職場の雰囲気になれなかったのか……半分ぐらいに減ったように思います。
面検
田原工場では高級車レクサスブランドを生産しています。GSは1993年からトヨタ・アリストのレスサス版として田原で生産が始まったそうです。GSというのはグランドセダンの頭文字だそうで、GS430、350そして先週からGS450hが発売されました。GS450hはハイブリッド車で末尾の「h」は、それを表すそうです。

田原新橋から汐川
田原新橋から汐川

面検という作業があるそうです。面チェックとか面検査とも言われるそうなんですが、車の表面になるプレス品を凸凹はないか、傷はないか、歪はないか検査するそうです。

どのようにするかというと、目の細かい砥石で表面を研ぐと凸があると浮かんでくるそうです。凹は浮かぶのとは逆でその部分だけ砥石がかからないそうです。歪は砥石で研いだ線が曲がって見えるそうです。この作業もひとつの部位(例えばドア一枚)に対して、ひとつの工程で最低でも一回はするようです。

ですからドア一枚にしても、完成車として世に出るまでに何人もの人が検査しているのでしょうね。何人ではなくて何十人かもしれません。それほどボディ表面の品質にはこだわっているのでしょう。

しかし一日何百枚もの面検査をするとなると、手も痺れてくるだろうし、目も腕も首も疲れてしまうのでしょうね。

でもそれがトヨタの品質につながっているのですから、そう考えると、とても大切な作業のようにも思えてきます。ま、全ての作業が全て大切なのですが…。
トヨタの品質
ぐるりんバス西浦停留所

WBCは日本が初代チャンピオンになり幕を閉じました。いろいろと問題が取りざたされ、組合せや審判がほとんどアメリカ人ということから「アメリカのアメリカのための大会」などと言う人もいました。日本が優勝したのですが、リーグ戦で行ったら層の厚いアメリカが最強だと思うのですが。

日本が優勝したとたん、国民栄誉賞をイチロー選手に与えるという話が出ていますが、どうなんでしょうね。イチローが中心だったとは言えイチロー一人で闘ったわけではないですしね。全員に与えるというのなら大賛成なのですが。もしもイチロー選手だけという話になったら、ぜひイチロー選手にはいつものクールさで辞退してもらいたいと思っています。

さて、今回の野球を見ていてやはりアメリカやキューバなんてのはドカンドカンという感じの豪快な野球をしますね。日本はと言うと緻密なもので、一球一球頭で考えながら動いているような野球だと思いました。

自動車生産にしても同じことが言えるのではないかと考えています。BSE問題で危険部位を除去し忘れるということが起きました。単純なミスを見逃してしまう。そして「ほかでは食べているのだから」などと開き直る。

またハリケーンなどの災害が起こると必ず火事場泥棒が出現します。ハリケーン・カトリーヌが襲ったニューオリンズでは、その泥棒が警官だったりもしました。モラルが低いと言うことです。

ところが日本では野球と同じで仕事に対して個々人が責任を持っているように思います。失敗や間違いを恥と感じるところがあります。それにモラルも高い。「見てないから良いや」なんてなかなか考えないですよね。

この国民性というか労働力の質の差が日本の自動車産業や家電産業を世界一にしたのだと思います。今回のWBCを見て、ボクが一番感じたのはそういった国民性の問題なのです。前回のエントリーで書いた「面検」という作業なんかも野球でいえば送りバントみたいなものでしょうか。これをコツコツしっかり出来る労働力が日本にはあるというのが、日本車が世界一になった理由なのかもしれません。
レクサス不振?
今週は完全定時だそうで、1分たりとも残業はならぬということらしいです。ですから、終業前が慌しい。そして全員が同じ終業時間で帰路につくので更衣室、バス停が混雑しています。駐車場も混雑していることでしょう。田原工場の従業員数は9000人ほどですから、残業1時間すると1000万円は軽く超えるでしょうから、かなりの経費削減になります。

2月3月は残業につぐ残業をして生産したのに、いきなり残業0になるとレクサスブランドは販売不振なのかと考えてしまいますし、田原寮の空き部屋が増えるのを見ていると、レクサス大丈夫なのかと心配してしまいます。ま、なくなるということはないでしょうし、トヨタ自動車も倒産するということもないのでしょうが、残業がなくなるとそのまま給料に影響するので、それが一番の問題なのです。

とはいっても、残業なしで帰ることができるのが嬉しいのでしょうか、それとも疲れ方が違うのでしょうか、みんな嬉々としているよう感じます。仕事が好きという人のほうが少ないでしょうが。

かく言うボクも本当は、給料のことよりも早く帰れることのほうが今は嬉しいのです。しかし、早く帰ってもこれといってすることもないのですが…。

桜の写真のコメントを頂いたので、本日ももう一枚。これは花びらを裏から撮りました。表から見るよりもカワイイ感じがします。「花の咲いていない時期は見向きもされない」と書きましたが、一年に一度咲くから、来年も見ることが出来るようにと頑張れる人もいるのかもしれないと思いました。

桜の花
トヨタ期間工と品質管理
トヨタ自動車田原寮の春 桜並木からの田原寮
田原寮の春

MSN毎日インタラクティブによると「国土交通省に届けられたトヨタのリコール台数は、04年度は9件・188万7471台。03年度の5件・93万4225台から件数、台数とも倍増しており、他社と比べても突出して増えている。」そうで、「トヨタや愛知県内の部品メーカーは人出不足のために、期間工や人材派遣でそれを補っており、それが品質管理の面で大きな問題を抱えている」という見解を示していますが、働くほうは手抜きができるほどの余裕もないように思います。

期間工だからミスを犯しやすいとか、モラルが低いとかではなくて増産のために余裕がないというのと、ラインを止められないという強迫観念が判断を鈍らせるということはあるとは思いますが、意図的に不良品を作るとか流してしまうということは考え難いと思います。

それはなにも期間工だけに言えることではなくて、社員の人にも言えることです。中には社員の方よりも明らかに良い仕事をする期間工もいるというのも事実ですし、社員の方がミスをしないということもないので、品質管理というのは時間的余裕、要するにコストをどれだけかけられるかということにも問題があると思います。

愛社精神というものは方向を間違うと会社自体を崩壊させるものでしょうから、社員だけの現場になるとこれも問題があるのではないかと考えます。期間工や派遣社員は外の人間ですから、なにかあると外部に漏れやすいと思いますし、それを社員教育に取り入れるということもできます。そういう意味で首脳部は社員に期間工の管理をやらせながら、実は期間工にも社員の管理をさせているという相乗効果を期待していると思うのです。といいながらも、期間工に上司の悪口を言う社員もいますが。

また期間工がいることで社員であることの特権が明確になりますから、離職率低下をもたらすものと思います。

ですから外部の人間である期間工や派遣社員は会社が大きくなればなるほど必要になるのではないかと思うのです。それも待遇面格差がある程度拡大しているほうが、社員意識というものが強くなると思います。(待遇格差がないと社員として働く意欲もなくなるでしょうしね)

ですから、ボクとしては雇用形態が品質問題に繋がるとは思っていないのです。コスト削減が品質管理にも及んだ結果だと思うのです。品質管理にコストは惜しまないことが大切だと思います。特にレクサスなどの高級車には無駄と思えるようなコストも必要ではないかと考えます。
期間工と忠誠心
名古屋駅ビル
名古屋駅ビル(ツインタワーだったっけ?

「終身雇用と年功序列は、日本社会が考えたセーフティーネットの最たるものだ。非正規社員ばかり採用すると、忠誠心がなくなる。自分の会社に骨を埋める層を確保する方が、会社にとっても良い。」とは小沢新民主党代表の発言です。

正社員登用を促進するための発言なのでしょうが、どうも忠誠心と非正規社員との関係は「なくなる」というほどのものでもないように思います。またセーフティネットというのは、もっと違った意味のものであるようにも思いますが、それはさておき、忠誠心です。

「なくなる」という主語は正社員でしょうか、それとも非正規社員なのでしょうか、それとも全ての社員なのでしょうか。どちらにしてもその割合が例えば現在の田原工場ぐらい(期間工や社外応援者などが全体の30%強)だとしても、忠誠心がなくなり商品に影響が出るほどのことではないと思います。現にトヨタはそれで業績を伸ばしているのですからね。

前にも書きましたが、正社員と非正規社員との関係が良好であれば正社員100%の職場よりは良い結果がもたらされると思います。まあ、小沢さんの発言は「ばかり」となっているので、期間工ばかりだとやはり問題でしょうが…。忠誠心、愛社精神というのはしばし近視眼的な思考になりがちですからね。

高度成長期には高速道路や新幹線が次々と建設されました。土木・建設関係の仕事は出稼ぎという非正規社員によって行われました。特にトンネル工事については豊後土工と言われる大分県からの出稼ぎ労働者が大いに貢献しました。プロの非正規社員集団とも言える人たちが存在しました。そういえば酒造りの杜氏なんてのプロの非正規社員集団という感じがしますね。

こういった人たちは何も会社のためとかはそれほど考えなかったのではないかと思います。何を考えたかというと自分たちの仕事へのプライドと親方への忠誠心だと思います。それは忠誠心と大雑把に言うのではなくて、恩や義理や人情といったもののように思います。

会社が大きくなればなるほど会社と言う組織は漠然としてきます。ボクたちが言う会社とは上司であり同僚であると思います。その職場環境が良ければおのずと忠誠心はわいてくるのではないかと思っています。
レクサスを作るということ


製造業というのはなにも工場だけで完結するものではありません。製品がユーザーの手に渡り、そして満足してもらうことが物を作るということだろうと思います。工場はそのお客様と遠いところにあるように思います。例えば料理人などは作ったものをその場で提供しますから、顧客と一番近いところにいます。良い板前さんは客に合わせて料理の材料や味を決めるとか。客の嗜好やその時の気候などにも合わせて、料理を作るのでしょうね。

レクサスはこの本の中で「人類がつくり出した最も完全に近い自動車」と評されています。この完全という意味はなにも高級というだけのものではなくて、製造から販売、アフターサービスまで人間が出来る限りのことをするという意味もあるように思います。それが「レクサスに乗るということ」の意味することだと言うことだろうと考えています。

確かに高級車はベンツやBMWなどありますが、レクサスは車というハード自体だけではなく、それを支えるソフトの部分も含めて完全に近いのだろうと思っています。それを顧客はレクサス店を通して実感するのだろうと思います。

「レクサスに乗るということ」を意識して仕事をすること、それは「レクサスを作るということ」なのですが、どれだけの人たちがそのことを考えて作業しているのだろうと思っています。作業をする目の前には職制はいるにしても、顧客はいませんし、「不良品を流すな」と言われても「お客さんに迷惑だろ」とは言われませんからね。同じことなのですが、仕事というものに対しての情熱が変わってくると思います。

工場で働くということは、ただ単に物を作るということではなくて、その物を通じて人と触れ合うことだと思います。トヨタ期間従業員として半年間だけ働いたとしても、何年か後あるいは十数年後、働いた年の年式のレクサスを見たらきっと「オレが作った」と懐かしむときも来るでしょう。それが物をつくるということだと思います。ちょっと想像力を働かせるとツライ仕事も少しは楽しくなるかもしれません。と、まあ、ボク自身に言い聞かせているのですが…。

当サイトでは第三者配信(Google)によるcookie を使用しての広告を配信しています。詳しくはプライバシー ポリシーをご覧ください。
<< | >>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   





blogpeopleロゴ
にほんブログ村 地域生活(街) 中部ブログ 豊橋情報へ

follow us in feedly

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...