トヨタ期間従業員に行こう

トヨタ自動車期間従業員であった筆者が期間工、派遣社員、非正規社員についてや雇用の問題そして1年間にわたる失業生活、その後のタクシー運転手としての日々なんかをぬるめに書いています。

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言葉に乗る
タクシーに乗るときは、緊張する。いい人柄のタクシーでありますようにと、あらかじめお祈りする。国民のだれもが、そうだと思うのである。お祈りしなくてはならないのである。

荒川洋治さんの「言葉に乗る」の一節だ。

きっと国民のだれもが、そうなのだろうと、ボクも思う。その祈りが通じなかった場合にトラブルが起きる。荒川さんのように「災難」だと諦めることの出来る人(諦めることが出来る日)ばかりではない。

そうしてきっとタクシー運転手も、「いい人柄のお客さんでありますように」と、祈っている。タクシーに乗せるときは、緊張するものだ。

タクシーのなかは、言葉の世界である。
・・・・・・
言葉がいいと、タクシーも楽しくなるのである。楽しいとまではいかなくても、気持ちのよいものになる。


「言葉がいい」のだ。そうして「車に乗るのではなくて、言葉に乗るもの」がタクシーであると言う。

読み方によっては、ずいぶんと皮肉に感じる人も多いだろう。たしかに、電車やバスに乗るときに、祈る人はいない。コンビニやスーパーに入るときだってそうだ。タクシーだけは、国民のだれもが「祈らなければならない」し、顧客側がこれほどまでに気を使い言葉を使うサービス業なんてものは・・・あるにはあるけれど、それはどこかでスケベ心がある、例えばスナックとかバーとか・・・あまり多くはない。

荒川さんがこれを書いたのが1998年。19年後の今、タクシーのなかは、沈黙の世界になっている。スマホを見たり、忙しく書類に目を通したり、中にはパソコンを開いてタイピングをしていたりもする。「通信状態がいいと、タクシーも楽しくなる」時代になった。

スマホ配車なんて言葉がなくても乗れる時代にもなった。無言で目的地まで到着し、支払いをする日も近い。

ボクたちは言葉を失おうとしている。それは「言葉に乗る」というタクシー業界にとっては、自殺行為のようでもある。

傲慢で横柄な職業態度こそが、一番の問題なのだ。19年も前から、いやそれ以前からわかっていたことなのだ。そうして業界も行政もそのことを解かっていて、「言葉」を排除しようとしている。言葉さえなければ、国民のだれもが、良質で健全なサービスを享受できる。災難は降りかからない。

タクシー運転手のボクたちがいなくなったとしても、業界は存続する。そうしてスマホ配車に無人運転、それとは別にUberやGoogleが無料送迎なんてものを、きっと19年後に、いやそんなに遠くない将来には運用している。それは国民には良いことなのだろう。災難なんてものはないほうが良いに決まっている。

やっと「車に乗る」時代が来たということなのだ。

荒川洋治「夜のある町で」
「言葉に乗る」の初出は「日本のハイヤー・タクシー」1998年1月号
きっとこうなることを荒川先生は予想していたんだろうね。
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